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映画「ナイトミュージアム2」字幕翻訳コンクール授賞式 スペシャルトークセッション&映画字幕翻訳ワークショップ

今年で3回目を迎える神田外語グループ「字幕翻訳コンクール」の授賞式が、10月11日、大手町の日経ホールで開催されました。総合司会は『王様のブランチ』などでおなじみの、映画コメンテーターLiLiCoさん。

授賞式に先立って行われた「スペシャルトークセッション」と「映画字幕ワークショップ」では、コンクール審査委員長で神田外語グループアカデミックアドバイザーの戸田奈津子さんと絶妙の掛け合いを見せ、開場を大いにわかせました。
その模様を、ご報告します!

< 第2部 > 映画字幕翻訳ワークショップ

映画字幕翻訳ワークショップ

「第2部は戸田さんが映画字幕の極意を語る「映画字幕ワークショップ」。

1秒で3~4文字、1行13文字×2行まで、読点(、)や句点(。)は使わない、などの簡単な映画字幕のルール説明があった後、いよいよ、課題となった「ナイトミュージアム2」3シーンの解説が始まりました。

今年度の目玉は、なんといっても、LiLiCoさんが映画字幕に初挑戦したこと。 それぞれのシーンの映像が会場に流された後、1.「直訳」を見る、2.LiLiCoさん訳に対する戸田さんの評価、3.戸田さん訳の公開と応募作で多かった間違いなどに対する解説、の順に進行していきました。

  • scene1
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scene1

最初は展示物のミニチュアと主人公ラリーの会話シーン。
さあ、LiLiCoさん訳、初公開! に遠慮なく、いきなりツッコミを入れまくる戸田さん。

scene1

OCTAVIUS Larry, what's done is done.
直訳 ラリー、済んでしまったことは、それまでだ
LiLiCoさん訳 もう済んだ事だ(7文字)
戸田さん訳 何をしてもムダだ(8文字)
OCTAVIUS Even the glory of Rome had to come to an end.
直訳 ローマの栄光でさえ、終わりを告げたのだからな
LiLiCoさん訳 どんな伝説にだって  結末がある(14文字)
戸田さん訳 栄光のローマでさえ没落したのだ(15文字)
OCTAVIUS Would you please not look dramatically off
into the middle distance when you say that?
It makes me feel worse.
直訳 芝居じみた目つきで中途半端な遠くを見ながら、
そんなことを言うな。いっそう気分が落ち込むよ
LiLiCoさん訳 そんなつぶらな瞳で言うなよ 痛むだろ(17文字)
戸田さん訳 遠くを見る芝居じみた目つきはやめろ(17文字)
目立った回答例

Larry, what's done is done.
Even the glory of Rome had to come to an end.

後悔先に立たず・覆水盆に返らず・もう おしまいだ・サイは投げられた・手遅れだ・後の祭りだ
終焉した・栄枯盛衰・諸行無常・盛者必衰
※ラリーのせいでローマがこれから終わる、というニュアンスの作品が多かった。

Would you please not look dramatically off into the middle distance when you say that?
It makes me feel worse.

感じ悪い・胸くそが悪い・ムカつく・気持ち悪い・罪悪感・イライラする・キモイ・気が滅入る(めいる)・テンション下がる・気味悪い・つらくなる・がっかりする

「"dramatic eyes"が、なんで"つぶらな瞳"なの? 意味が違うでしょ」「"It makes me feel worse."が"痛むじゃないか"って、何が痛むの?」と、次々に出てくる鋭い指摘に、LiLiCoさんは返す言葉がありません。そして「たとえば今の"痛む"みたいに、お腹が痛いのか心が痛いのか幾通りにも解釈できるような言葉遣いは、字幕でしてはいけないんですよ。一瞬で分かるようにすることが大切」という説明に、LiLiCoさんは深く納得。

scene2

ルーズベルトの胸像と会話するシーン2でも、もっと分かりやすい訳を心がけるように指摘を受けたLiLiCoさん。

scene2

Teddy Have we met?
直訳 前に会ったかな?
LiLiCoさん訳 知ってたの?(5文字)
戸田さん訳 前に会った?(5文字)
Larry Oh, no. There's, uh, there's another Teddy.
We have one of you in New York.
直訳 いいや。だが・・・その・・・テディはもう1人いるんだ。
ニューヨークに君の1人がね
LiLiCoさん訳 い・・・いや、違うテディだ  NYにも1人いる (17文字)
戸田さん訳 ニューヨークでもう1人のテディにね(17文字)
Teddy Really? What's he like, this...Other me?
直訳 本当か? それで、どういうやつなんだ・・・
もう1人の私って?
LiLiCoさん訳 そうか・・・  どんなヤツだ?そいつは(13文字)
戸田さん訳 その私はどういう奴だった?(12文字)
目立った回答例

Have we met?

なぜ名前を?・君 誰だっけ?・君は誰?・初めまして?(はじめまして?)

Oh, no. There's, uh, there's another Teddy.
We have one of you in New York.

分身・片割れ・勘違いだ・人違い(だ)・NYの君と知り合い/友達・感嘆詞「ほぅ」「あー・・・」「あぁ・・・」「え~と(えぇと)」

Really? What's he like, this... Other me?

どんなだった?・どんな風?(ふう?)・マジ(まじ/まぢ)・イケメン・かっこいい・男前・ドッペルゲンガー
※疑問文なのに、最後に「?」がついていない翻訳も多かった。

scene3

最後は、リンカーント大統領の巨大彫像と会話するシーン3です。

「リンカーンといえばオバマ大統領も尊敬する、偉大な大統領です。それを頭に入れて訳をつけていきましょう」と戸田さんが話を始めると、慌てて「あ、私の訳は、 もういいです」とLiLiCoさんが言い出しました。「あら、いいわよ、見てみましょう」と、LiLiCoさん訳を映し出すと。

scene3

Lincoln Blast these pigeons and their incessant cooing!
直訳 頭にくるハトめ!  ひっきりなしにクークー鳴きおって!
LiLiCoさん訳 ウルサイ鳥たちやな~(10文字)
戸田さん訳 クークー啼くな うるさいぞ(12文字)
Lincoln All right then.
Time to see the state of this great union!
直訳 よし、それではこの偉大な国の現状を視察するとしよう
LiLiCoさん訳 さてと・・・  この国の事情を見るか・・・・(13文字)
戸田さん訳 この偉大な国を視察しよう(12文字)
Lincoln I always say, leave nothing for tomorrow which can be done today.
直訳 「今日できることを明日に延ばすな」それが私の口癖だ
LiLiCoさん訳 すぐ出来る事は  今日中にやるべきや~(17文字)
戸田さん訳 "今日出来ることを明日に延ばすな"だ(16字)
目立った回答例

Blast these pigeons and their incessant cooing!

しっ!しっ!・ウザい・チッ!・くそっ!・ちくしょう!(畜生!)・いまいましい(忌々しい)・料理する・殺してしまえ・ふきとばせ・爆破しろ・ピーピー・ポッポ ポッポ・ピーチク(パーチク)

All right then. Time to see the state of this great union!

一般教書・連合・組合・団結・連邦・議会の時間・見物・状態を見る・国民(人民/民)と対面・南北戦争・(我が)北軍は・大統領演説・見回り/散歩に行く時間だ

I always say,
leave nothing for tomorrow which can be done today.

思い立ったが(ら)吉日・善は急げ・明日やろうはバカ(馬鹿)野郎だ・モットー

  • scene1
  • scene2
  • scene3

戸田さん LiLiCoさん

「なんで、リンカーンが大阪弁なのよ!?」。戸田さんも会場も爆笑。
その後、多かった間違いとして「"Blast these pigeons"に"鳩を殺せ"みたいな訳を当ててきた人がいるんですが、平和主義者のリンカーンが"殺せ"とは言わないでしょ? 大阪弁もそうですが、ちゃんとキャラクターを考えて訳さないと」という話になりました。

そして、リンカーンのセリフの中にある"Union"を取り上げ、南北戦争前の北部では国を"Union"と呼んでいた、そしてリンカーンは北部出身だから、という歴史の解説が入りました。歴史的背景を知らないと適切な字幕はつくれないんですね。

最後に「LiLiCoさんはみんなが間違えそうなところを間違えるので、大変によかった」と、戸田さんから言葉をいただくと、LiLiCoさんは「いつかスウェーデン映画の字幕をつくりたいと思っているのですが、こんなにも壁があるんですね。でも、頑張ります」と、前向きな言葉を残し、第2部は終了しました。